ドライアイスからの脱却、蓄冷材保冷パッケージ(2/2)

前の記事では、ドライアイスの特性と課題、そして超低温潜熱蓄冷材の利点について紹介しました。今回は-70℃帯潜熱蓄冷材を用いた、バイオテクノロジー・ライフサイエンス分野におけるコールドチェイン利用についてご紹介します。

現状の課題

ここでは、研究室や検査機関、バイオバンクなどの施設内運用におけるコールドチェインの課題について考察します。細胞や血液、菌体などの生体試料(サンプル)は、-80℃~-196℃の超低温環境で保管されます。従って、この温度を基準にしてサンプルの品質にインパクトを与えるリスクを可能な限り低減することが求められます。

  • 凍結したサンプルの保管場所までの搬送
    プログラムフリーザーなどで凍結処理されたサンプルは、速やかに液体窒素容器やフリーザーに保管する必要があります。しかし凍結サンプルをフリーズボックスに移し替える作業を超低温下で行うのは困難です。
  • 保管されている凍結サンプルのラボ内・クリーンルームへの搬送
    多くのケース、保管室と研究室やクリーンルームは併設されてはいますが、それでも出庫から実利用までには、一定の距離と時間がかかります。
  • 保管されている凍結サンプルの品質管理、棚卸、整理作業
    最終製品やマスターセルバンク、ワーキングセルバンク等の重要な資源が適正であることの検査や整理、出荷確認などの作業を、最適な環境温度で実施するには課題が多くあります。
  • 凍結サンプルの受付業務、ラベル貼付などの作業
    依頼元や提携先から届く凍結サンプルの受付・受領処理や、凍結検体へのラベル貼付処理などにも、課題が多くあります。

CryoTrack System 

CryoTrackシステムは、弊社が開発したコールドチェイン向けの保冷パッケージです。玉井化成株式会社のCV-70潜熱蓄冷材と、真空断熱材(VIP: Vacuum Insulation Panel)と高性能断熱素材を用いた用途に適したラインナップで、効果的で生産性の高い保冷手段をご提供します。

CryoTrack_series

CryoTrack Porter

Porter

CryoTrack Porterは、凍結サンプルの施設内搬送を目的としたツールです。CV-70潜熱蓄冷材を1~2枚使用し、-60℃で5時間以上の温度維持が可能です(環境温度20~25℃)。サイズはW280×D190×H160mmとコンパクトなので、ラボ内やパスボックス経由での搬送に適しています。

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想定利用シーン

  • 液体窒素容器やフリーザーからのサンプル搬送
  • フリーズボックス単位でのサンプル搬送
  • プログラムフリーザーの冷却ブロックごとサンプルを搬送

 CryoTrack Station

Station

CryoTrackStationは、施設内での凍結サンプルに関わる作業用ワークベンチを目的として開発しました。CV-70潜熱蓄冷材を13枚使用し、前後左右+下面の5面から放射冷却することで、W390×D200×H120mmの有効空間を-50℃で3時間以上維持することができます(環境温度20~25℃)。

作業スペースでは、135mm角のフリーズボックスを2個並べることができ、超低温環境下でサンプルの整理などの作業を実施することができます。

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また、追加で3枚のCV-70潜熱蓄冷材を用いて上面からも冷却可能です。付属のマグネット式フタを閉めれば、-50℃で24時間以上維持することができます(環境温度20~25℃)。

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想定利用シーン

  • 保管サンプルの棚卸や整理、ボックス間の移し替え作業
  • 品質検査、出荷前の付帯文書の添付作業
  • 凍結サンプルへのラベル貼付や外観検査
  • フリーザー故障の際のサンプル避難、バックアップ利用

CryoTrack Carrier

Carrier

CryoTrack Carrierは、施設間の検体輸送やクリニックから細胞加工施設など、ドライアイスを用いたハンドキャリー輸送向けのパッケージです。コンセプトはPorterやCarrierと同様、真空断熱材と断熱素材を用いたキャリーバッグです。ショルダーベルトで持ち運びが可能で、バッグ天面にはCFR21 Part11対応の温度ロガーを格納できるポケットを備えています。

 

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想定利用シーン

  • 8~10時間以内のサンプルの施設間搬送(車両・交通機関など)
  • ドライアイスを利用しにくいシーンでの超低温輸送
  • ラボ内の超低温検体の移動・搬送

お問い合わせ

弊社では潜熱蓄冷材を用いた様々な取り組みをしています。検証資料や詳細な情報については、弊社までお問い合わせください。

 

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